良く晴れた土曜の午後、冬の山道を通って到着。
すぐに右の下顎角の2横指下にICチップのような受信板を埋め込まれ、席に着くように言われた。
頭が痛いような気がして、まず先に横になっても良い聞くと、白髪メガネの小男は頷いた。水も出してくれない、不親切なところだと思った。
目が覚めたら夕飯の時間、ルールを聞かされてもいない。周りの様子を見ると首にカードを当ててから差し込んで、カートから好きなものを取るようだ。
もしかすると、1番に食べ終われば点数が溜まるかもしれないと考えた。速そうなのは、天然パーマの大男。ダメだ、牛乳にパンをひたす噛まないスタイル。諦めよう、彼の背中にはバツが何個も刻まれている。
とにかく全方向から観察されている、これを終わりにしたかった。何も分からないから困ったものである。
次の日からは、食べるのが遅い老婆の隣で、ゆっくり食べた。老婆は残さず食べ終えて号泣していた。
それから毎朝毎朝脇の匂いを嗅がれ、目の奥を覗かれて体調を自己申告するようになった。
この時審査員のお尻を力一杯掴んだら叫ばれて、独房に入れられた。勿論ポイントは0になる。マイナスにならずに良かった。部屋に戻ると、早食いの大男は分厚くて固い洋書を読んでいる。チラッとAstro??と見えた気がした。とにかく何を聞いても内緒、という用心深い男だった。
隣には、世界を買えるブラックカードを4枚もっている。実力を見せる、とその痩せ坊主はデニーズの優待券200枚を撒いていた。罠かもしれないので、誰も触りもしなかった。
皆小刻みに揺れていて、缶ジュースを開けられないので自動販売機はペットボトルばかり売り切れだった。
門番みたいな人に胸が痛い気がするからこのゲームを終わりにしてくれ、と何度も何度も説明したら、三度目の説明の時に、無意識に暴言を吐いてしまい両肩に焼印を押された。またポイントが0になった。
吸う部分を潰すとメンソールが強くなるタバコを吹かしていると、いかにもタバコを欲しそうにしている男に、「一本くれないか」と強請られた。最新型のスマートフォンが反応して「絶対に嫌です」と機械的に答えたら警告灯が全点灯し、スマートフォンが没収になった。強請った男は大慌てで階段を転げ落ちていった。
暇になったので外に抜け出し、コンビニエンスストアでノンアルコールビールを買った。パーキングで飲んでいると、後を付けてきた刺青男が、それいいですね。
とロング缶を6本買ってその帰り道に彼は轢かれたらしい。
遠回りをして、お寺の鐘を鳴らしてその脇のベンチで寝た。プスっと音がして頭が動かなくなった気がした。
漫才コンテストの配信を見ていたら夜になった。帰って密を避けてチキンソテーを食べた。待っていてくれた痩せ男とポーカーをして、缶コーヒーを奢ってもらった。
コンテストの勝者は不満を叫ぶ凸凹コンビだった。応援していたから良かった。
次の日のホールでその話題をするものは誰もいなかった。